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Channel: YU@Kの不定期村
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DVDはまだか!妙作「ウルトラマンパワード」の怪獣デザインは「シン・ゴジラ」にて胎動する

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こんにちは、YU@K(@slinky_dog_s11)です。

ここ数年、歴代ウルトラマンのソフト化が加速している。ティガやダイナ、初代マンやセブンなどがBlu-ray化され、最新のギンガやXも特典映像満載のBOXを定期的に繰り出している。Amazonの「欲しいものリスト」にそれらを入れてはニヤニヤしつつ財布を開いて白目を剥く日々だが、個人的にはそろそろ「ウルトラマンパワード」のソフト化がどうにかならないものかと…。私の、ある種のウルトラ原体験に近い作品であり、思い入れが非常に強い。未だにOPテーマを聴くとサビ終盤の「ウッルットラッマ~ン(テレテレレ~↑」の上がり調子なフレーズでグッと込み上げるものがある。

「ウルトラマンパワード」は、1993年にアメリカにて製作されたシリーズ。同じく海外で製作された「ウルトラマンG(グレート)」の好評を受けての“海外ウルトラマン第二弾”であり、日本では1995年に放映された。主演は特撮ファンにはお馴染みのケイン・コスギ(改めて振り返るとゴジラにもスーパー戦隊にもウルトラマンにも出演していてすこぶる輝かしいご経歴…!)。アメリカの雄大な大地で戦うウルトラマンは目が青く、クリーチャー然とリファインされた初代マン怪獣たちは非常に魅力的だ。





物語はウルトラマンのスタンダードを地で行くタイプであり、一心同体となった異星人であるパワードと地球人のケンイチ・カイ隊員が共に怪獣と戦っていく構成。怪獣が全て初代「ウルトラマン」に出てきた怪獣のリデザインであり、便宜上「パワード〇〇」として語られる。ライバル的な存在がバルタン星人で、最終戦がゼットンと、これまた初代マンらしさが満載である。多少語弊があるかもしれないが、ご存じない方には「初代ウルトラマンの海外リメイク作品」とでも説明すれば輪郭が掴みやすいだろうか。

とはいえ本作最大の問題点(?)が、肝心要のウルトラマンのアクションそのもの…。アメリカの表現規制により、殴ったり蹴ったりといった動きが基本的にNGとなった結果、パワードさんは全力で怪獣を「押す」とか、光線技を「撃つ」とか、相撲のように「取っ組み合う」とか、非常に独特な動きばかりを強いられた。結果、(最大限にポジティブに解釈するのなら)アジアンテイストが見られる柔道や相撲や太極拳のようなどこか礼節を感じるアクションになっており、端的に悪く言えば、「モサい」「しょっぱい」のである。





パワードはアクロバティックな跳躍で敵怪獣の背後を取り、そっ… と「押す」のだ。撫でられた怪獣は時によろけたり時に思いっきり吹き飛ばされたりするが、そうやってパワードさんが探り探り(のように)怪獣と対峙する様がハイスピードカメラで捉えられ、一応の巨大感や存在感は演出されている。が、ミニチュアの配置や見せ方が痒いところに手が届かない感じもあり(“特撮”本家本元の日本製作品と比べるのも酷な話なのだが…)、ともすれば、だだっ広い運動公園でふわふわと巨体が押し合っているような映像にも見えてしまう。

そんな大人の事情バリバリの独特の動きすら、幼少期の自分には確かに「かっこいい」ものであった。日本のそれとはまた違う質感の画面で、「カイジュウ」と「クリーチャー」を折半したような巨体がのっそのっそと動き回る。オープンセットの太陽光の下で“押し合う”ウルトラマンや怪獣に、どこか国内ウルトラマンとは違った“リアルさ”を感じていた記憶がある。アメリカは日本より極端に湿度が低いし、カラッとしたあの空気感もまた新鮮だったのかもしれない(適当)。




▲圧倒的なまでの「ウルトラ大地」…っ!手前にビルを置いてくれ…!


その怪獣は、前述のとおり初代「ウルトラマン」に登場した怪獣のリメイクになっている。怪獣系統の奴らは動物性やクリーチャーっぽさが強調され、異星人タイプは全体的にシャープさが増した。比較して分かりやすいのは他でもないバルタン星人で、パワードバルタンの一見すると骨皮筋衛門のようなフォルムは非常に独特である。




▲夜の高層ビル街にそびえ立つパワードバルタンは異彩を放つ。




▲レッドキングは名実ともに“レッド”となった。




▲ご尊顔もこんなに凶暴に。




▲最も「誰だお前…」状態なジャミラ。宇宙服がそのままクリーチャー化したような印象を受けるが、“彼”の境遇を考えると納得のいくデザイン。




▲本作でもレッドキングと一戦交えたドラコは、裾から小刀を取り出す仕事人のように描かれた。




▲セットでお馴染みのアボラスとバニラは体表が少しグロテスクで生物感に溢れている。




▲他にもお馴染みの怪獣・星人たちがのっそのっそと動き回る。




▲パワード怪獣のデザイン画は「語れ!ウルトラ怪獣」に収録されている。


そして、この怪獣造形を担当されたのが樋口真嗣や前田真宏なんですね。Twitterで先日パワードトーク(パワードを温かい目で語る会)をしていた時にフォロワーの方に気付かされたのですが、そっくりそのまま「シン・ゴジラ」のスタッフという…。前掲の(特に)アボラスやバニラを見てからシンゴジを見ると、なるほど確かにこの造形は…!と妙な感動が込み上げてくる。実在しない超生物である巨大怪獣を、本当に存在しそうなリアリティと造形で魅せる。一瞬の違和感こそが一周してチャーミングというか…。早くシンゴジの全体像を拝んでみたいものです。





ウルトラマンパワード、グレートのソフト化は、海を越えての交渉事と過去の契約が色々絡んでいるとかで、簡単にはいかないというのは、分かるんですよ…。分かるんですよ円谷様…。でも、この2016年にVHSとLDでしか出ていないというのは…ちょっと…寂しすぎやしませんか… しますよね… するんですよ…。Blu-rayだなんて贅沢は口が裂けても言いませんので、何とかどうにかしてDVDを… 出してはくれませんか… パワードさんの「押し」や怪獣たちの驚異的な造形、そして森川智之や戸田恵子といった豪華吹替キャストの熱演を… 日常的に拝める平和な世界を……っ!





カイ隊員と完全分離して単身ゼットンとの最後の戦いに臨むパワードさんの転がっては光線を撃って反射させてやけにさくっと勝利を収めるあのしょっぱい感じを是非DVDで!DVDで!お願いします!




▲ちなみに、パワードはLDのジャケットイラストが非常にかっこいい。




▲バンダイから3DOで出たゲームも印象的。




▲そしてなんといってもパワードといえばサウンドバトラー!


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