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Channel: YU@Kの不定期村
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結騎了の映画ランキング2016 EPISODE I

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こんにちは、YU@K改め、この記事でもご紹介した通り、結騎了(ゆうき・りょう)(@slinky_dog_s11)です。

今年も、年末恒例の劇場鑑賞作品振り返りの季節がやってきました。今年は仕事もプライベートも何故かやたらと忙しく、近年でも最低クラスの34作品しか映画館で鑑賞できなかったという、中々に後悔の残る一年でした…。しかも、ブログでの映画レビューもほとんど書けず終い。ということで、例えば2014年はこんな感じで、続く2015年はこんな感じでTwitterでやっていたのですが、今年はブログでしっかり文字数をかけてレビュー&ランキングをしていこうかな、と。

日程としては、本日公開の当記事が最下位である34位~21位まで、明日公開の記事で11位まで、その翌日に10~6位、そして最終日に上位5作品という流れで、刻みに刻んでいきたいと思います。年末の暇つぶしにでも、どうぞお付き合いいただけますと幸いです。


【目次】
EPISODE I(~21位)
EPISODE II(~11位)
EPISODE III(~6位)
・EPISODE IV(~1位)


※毎年のことですが、言うまでもなくあくまで「私が」面白かったか否かというランキングなので、作品の面白さやクオリティを保証するものでは全くありません。また、核心部分のネタバレは避けますが、所々展開に触れる文章がありますので、ご了承ください。







34位『デスノート Light up the NEW world』

今年トップクラスの「やってくれたな」作品。というのも私は本当に『デスノート』という作品が大好きで、連載当時からの原作はもちろん、映画にアニメにドラマにミュージカル音源をヘビロテするくらいに敬愛しているのだけど、その一連のメディアミックスの最新作がこんなにもお粗末な出来だったことに、とにかく“残念”の二文字しか出てこない。

実写版『GANTZ』や『アイアムアヒーロー』を手掛けられた佐藤信介監督だけあって、絵作りは良い。ハッタリが効いているし、何より夜の情景の切り取り方は惚れ惚れする画面ばかり。が、肝心のストーリーが本当に意味不明で、これがあの『デスノート』かと驚愕するばかり。新規登場人物が軒並み「大丈夫かよ」ってくらいに迂闊なのは百歩譲ってまだ良いとして、作中・そしてファンの中でも“神”格化されている「夜神月」というキャラクターにこんな後付け設定を持ってきたのは心底納得がいかない。

作中最大のどんでん返しとなる展開も、くどくどと連なる説明が時系列的に破綻しているし、何よりこの『デスノート』という作品において「理屈が破綻している」ことがどれだけ「やっちゃダメ」なことなのか本当に分かっているのだろうかと、観ている最中は謎の冷汗をかいていた。リンゴの報酬もなくノートによる殺害に加担するリュークにも目が点になったし、最後の展開も「悪と正義の伝導」的な意味でやりたいことは分かるのだけど、そこに観ているこちら側が微塵も感情を乗せていけないのが本当に辛かった。そう、“本当に”辛かったのだ。







33位『クリーピー 偽りの隣人』

これは単純に好みの問題でこの順位なのだとことわっておきたいが、私にとっては「は?」からの「いやいや」からの「ふざけるなよ」に変遷する感想が胸の中に溢れた作品だった。香川照之の怪演は流石の安定感だし、西島秀俊の日常が静かに侵されながらどうしようもなく謎に囚われていく過程も面白いのだが、如何せん後半の展開が納得いかなかった。前半は、不穏な空気をモブの群衆で表現したり、ぐりぐりと動き回るライティングで川口春奈の精神状態を画面いっぱいに演出したりと、映像的な見所も多かった。加えて、サイコホラーな家族が罪を犯しながら転々としている背景が次第に明かされ、そのミステリーな進行も悪くない。

が、前半でじわりじわりと積み上げたミステリー要素が、後半になると途端に型崩れする。いきなり常識的にあり得ない空間(セット)が出現したかと思えば、前半でしつこいまでに積み上げてきた「日常への浸食」が「薬による篭絡」にすり替わる残念さ。そして、いくらビターエンドといえど納得のいかないクライマックス。黒沢清監督作品なのでこういう“味”になるのはある程度予測は出来たものの、あまりにも「前半で期待させられた物語展開」をチープに裏切ってくる描写が多く、要は、残念に感じてしまった。

ああいう殺人方法、そして遺体遺棄の方法があるのは良い。家屋の位置関係に追われる側も追う側も共通点を見出すのも面白い。それらは、サイコホラーとして“そそられる”側面がある。しかしそれ以前に、この起承転結が形作る空気感そのものに、私はノレなかったのだ。







32位『仮面ライダー1号』

大変失礼ながら、「藤岡弘、主演で仮面ライダーの映画を撮る」のはおそらくこれが最後になるだろうからして、歴史的にこの事実だけで十分に意味があるのは、大いに分かる。分かるのだけど、それと「私が楽しめたか」は当然ながらイコールではない訳で、そう考えると正直「うーん」としか言えなくなってしまう。世界を渡り歩き戦い続けてきた伝説の仮面ライダーが、装いを新たに日本へ凱旋。新たなショッカーの陰謀と戦いを繰り広げる。その話の筋はこの上ない王道で良いと思うし、正直序盤は普通にワクワクして観ていた。現行作品である『仮面ライダーゴースト』の若々しいメンバーと圧倒的な存在感を持つ本郷の対比も良かったし、偉大なる先輩が教えること・そして若い後輩に気付かされること、そういった関係性がドラマの中で成立していたのも良かった。

しかし、あまりにも「本郷猛」というより「藤岡弘、」の映画として尖りすぎていたのかな、というのが本音である。本郷を演じられた当時からの役者人生・周囲からの声や期待・諸々のインタビューを読むに、「本郷猛」と「藤岡弘、」が自ずと融合してしまっていたのは分かるし、一介の仮面ライダーファンとしてそれはそれで頭が上がらない事案ではあるのだけど、それが完全に作品を斜め上の方向に引っ張ってしまっていたのかな、と。妙な勢いとメッセージ性ばかりが強引に先走り、作品のテンポや納得感をほとんど置き去りにしてしまったように思える。宗教映画としてのドライブ感に当てられてしまえば加速度的に興奮が湧いてきたのかもしれないが、残念ながら私はそうはなれなかった。







31位『ブラック・スキャンダル』

なんというか、捉えようがないというか、掴みどころがないというか…。ジョニー・デップがまるで血の通わない極悪ギャングを演じる印象から受ける「ダークさ」「シリアスさ」に比べて、物語そのものの「単調さ」「フックのなさ」が“あだ”となったのかな。ここまでキツい人間が周囲を恫喝し立ち回っていくにも関わらず、恐ろしいほどに物語進行のテンポが悪く、ずーっとジメジメジメジメしている感じ。かといってその世界観に二重にも三重にも惹きこまれるかと言ったらそうでもなく、正直感想を書いている今でさえ「何を書けばいいのだろう」となっている程。大変失礼ながら、ぶっちゃけていうと、「記憶に強くは残らない」類の作品であった。







30位『君の名は。』

これもまた「ノレなかった」の一言で終わってしまう話ではあるが、この作品を通して再確認できたのは、自分は映画鑑賞において「予測を超えたストーリー展開」を強く期待してしまう人間なのだろうな、ということ。というのも、『君の名は。』は最初のOP映像で暗示されたストーリーがそっくりそのまま進行して終わる話で、「突然体と精神が入れ替わった年頃の男女が・最初は互いを罵り合うもバタバタと日常を送るうちに次第に惹かれ合って・突如何かしらの障害が訪れて離れ離れになって・そこで互いに実は恋していたことが分かり・色々あって障害を乗り越えて再会して終わるんだろうな」というあのOP映像から予測できるストーリーがびっくりするくらい“そのまま”描かれたので、私にとっては「え?」という戸惑いが強かったのだ。「“そうだろうな”と思われる物語がそのまま展開されること」はこんなにも観ていて「しんどい」のかと、そう感じてしまった。

ネットの感想を色々と読んで、その多くに挙げられていたのが震災との関連性・暗喩だったのだけど、それならそれで「結局助かる」という答えを出してしまった以上自分の中ではどうしても納得がいかないし、かといって男女が入れ替わるシチュエーションそのものにも特段惹かれないし、予告や宣伝で流れていたあの主題歌もエモーショナルな盛り上がり所でガツンと鳴るのかといえばそうでもないし、ことごとく私のアンテナをすり抜けていく要素が多かった。映像面・アニメーション技術の側面で「すげぇ!」となる部分は沢山あったものの、前述のアレコレを押し上げるには足りず、といった感じで。







29位『スーサイド・スクワッド』

撮影時点での紆余曲折におけるチグハグ感が綺麗に完成物にまで影響してしまったなあ、というのが第一印象。おそらく『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のように「クセの強い愛すべきヤツラが何だかんだちょっといい感じの行動しちゃうぜ」という塩梅を狙ったのだろうが(序盤のキャラクター紹介パートにも顕著にそれが見て取れる)、どうにもそれが成功しているとは思えない。ドラッギーな色彩感覚とキレた世界で生きるキャラクターたちの個々の魅力そのものは非常に面白く、なんだかんだ「このメンバーで続編やります」とあればホイホイ観に行くだろうとは思う。とはいえ、「なぜ彼らが団結して」「なぜ敵を倒して」「それがなぜ“結果的に”人類を救う形になるのか」という肝心の縦軸の打ち出し方が、本作は恐ろしく下手だった。

「敵はコイツでした!バーーン!」という驚愕(?)の真実が明かされて登場人物たちが「ええ?」となるも、それは観ている側には何十分も前に示されていたことだったり、バーのシーンで“それらしく”身の上をぶっちゃけながら本心を交わし化け物討伐に向かう流れも、上っ面の雰囲気は抜群だが肝心の動機の面で全然納得がいかなかったり…。せっかくの魅力的なキャラクターたちのドラマが、そこから全くもって「繋がったり」「発展したり」「二倍にも三倍にもなったり」していかないのだ。この手の物語ならば、掛け合いや相乗効果で1+1が5にも8にもならないと、面白くない。

キメのカットそのものはキレッキレで、ジョーカーを囲う刃物だったり、グツグツ豆乳風呂だったり、バットマンの見事な仕事ぶりだったり、部分部分は「おお!」というシーンも少なくない。だからこそ、縦軸のチグハグさが浮き彫りになってくるのだけど。







28位『ゴーストバスターズ』

かの有名なSFコメディ映画のリブート版だが、撮影段階での紆余曲折や本国での様々な反響については、私なぞが今更語ることではないだろう。ぶっちゃけて言うと本作は結構楽しめた方なのだが、なぜこの順位になっているかというと、率直に「ギャグがスベっていたから」。アドリブ加減もあったとは思うが、(例えば霊柩車登場シーンに顕著だったが)、コント的にはもう十分に“落ちている”のにそこからダラダラとツッコミやボケが続くようなシーンが多く、そのテンポ感についていけなかったなあ、と。例えるなら、「ますだおかだ」の岡田圭右さんが獲得する笑いは登場一発目(ギャグ開始時点)がピークだが、その後もダラダラと展開して観ているこちらが心苦しくなる感じがあって(あくまで個人の感想です)、このリブート版『ゴーストバスターズ』も“岡田的”な笑いのテンポがあったような気がしてならない。コメディ映画でここにノレなかったのは辛かった。

とはいえ映像面は大変面白く、観た人の多くが挙げているような「ホルツマン無双」だったり(メインテーマが熱く鳴り響くのは最高だが、どうせなら4人全員が活躍するシーンで鳴らして欲しかった気も…)、3D効果を最大限に狙ったフレームアウトの遊び心だったり、見所も多い。また、「なぜあのロゴなのか」がしっかり劇中で拾われたり、ストーリー展開はまるで1984年版の鏡写しのような忠実さであったりと、このリブート版が意図するところは漏れがなく伝わってくる作りだったと思う。「世間にはじかれた面々が“幽霊狩り”で街を救う」というカタルシス面も、しっかり継承されていた。







27位『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』

「コミックを現実社会に落とし込んでいくのがマーベル映画(MCU)」で「コミックの世界を現実の情景に再現していくのがDC映画(DCEU)」とはよく言ったもので、先の『スーサイド・スクワッド』と同じく、キメのカット作りには本当に目を見張るものがあった。圧巻のバトルシーンだけではなく、ふとした瞬間の構図や陰影の処理が止め画で魅せるアメコミならではのものであり、そういう意味ではあらゆるアメコミ映画以上にアメコミ映画だったな、と感じる。

しかし肝心の話の筋・運び方がどうにもお粗末で、長い上映時間のほとんどを退屈寄りで過ごしてしまった感は否めない。肝心の2大ヒーローの激突や、和解からのワンダーウーマン参戦の大乱戦など、クライマックスに立て続けに紡がれるドラッギーなアクションシーンは非常に楽しかったが、そこに向かうまでの前振りや積み重ねが(あそこまで時間を割いた割に)不親切だったかな、と。ブチ上がるアクションシーンはそこに至るまでの物語が綺麗であれば尚一層ブチ上がるものだが、本作はどうにも片手落ちであった。

スーパーマンが9.11のように世界情勢を一変させ、それによって生まれたバットマンと歴史の裏で活躍したワンダーウーマンが手を組み、やがて世界各地の超人に渡りをつけていく。ユニバース展開の偉大なる先駆者であるMCUが「それぞれ個別に活躍するヒーローが集結する」方法を取ったのに対し、追随するDCEUは「ヒーローにより情勢が一変した社会で、その影響によって交わっていく超人たち」という積み上げ方を選んだ。このアプローチの違いがどういう決着(?)を迎えるのか、期待が高まるばかりだ。







26位『劇場版 仮面ライダーゴースト 100の眼魂とゴースト運命の瞬間 / 劇場版 動物戦隊ジュウオウジャー ドキドキサーカスパニック!』

まず上映順に、『ジュウオウジャー』から。この作品が持つポテンシャルは実は全く突飛でも新しいものでもなくて、戦隊ヒーローとしての王道さ、そして何より堅実さが最大の魅力だと思っている(むしろ前作『ニンニンジャー』のポテンシャルが斜め上すぎた。褒めてます)。この劇場版は、その王道&堅実さに裏打ちされた熱いストーリーとして、非常によくまとまっていたように思う。『ジュウオウジャー』は異種族混合戦隊だからして「誰かと誰かが分かり合う・繋がる」というテーマを掲げているが、そのTV本編のテーマをしっかり銀幕でも実行してみせた、その作り方そのものも堅実さに溢れている。脚本の香村純子はより一層「ポスト小林靖子」としての側面を強めるなあ、とも感じたり。

一方の『仮面ライダーゴースト』だが、こちらもジュウオウ同様に「TV本編をそのまま銀幕でも実行してみせた」感が強い。とはいえ、こちらは「う~ん」というニュアンスだが。主人公であるタケルの肉体の扱われ方や、〇〇〇を食べるというエンディング、CG盛り沢山のムゲン魂の見せ場など、やりたいこと・魅せたいものはとても伝わってきた。が、TV本編同様にどうにもチグハグ感が拭えず、縦軸が探しにくい禅問答バトルは、でかでかと「英雄の村」と書かれたのぼりに精神をオメガドライブされるばかりであった。そもそも、タケルの「消える消える詐欺」が頻出イベントすぎて、全くエモーショナルに盛り上がらないのだよ…。







25位『ファインディング・ドリー』

正直普通に面白かったし、並の映画よりははるかに高いクオリティを誇っているとは思う。流石のピクサー最新作である。が、だからこその足枷のようなものが目立ってしまったかな、とも感じてしまった作品。スペクタクル・冒険劇・愛すべきキャラクターたち・社会風刺・ドタバタ劇・チェイス・小ネタ・テンドン・感動の涙・ハッピーエンド。そういうピクサー映画がおよそ高水準で混ぜてくる要素が、今作はあまりにもごった煮になっていたと言うべきか、“ひとつ”にまとまり切れていないと言うべきか…。

ドリーが抱える過去やその生まれながらのハンディは、当たり前のように我々の現実社会を模しているように感じることができる。大海原に対する水族館は閉塞感を覚える息苦しい現代社会の暗喩とも解釈できるし、そこで決められた行動から逸脱してみせる解放感・カタルシスが狙うところも、大いに分かる。が、今作はあまりにもフィクションにおけるドリーたちの活躍が作中実社会に影響をもたらしすぎていて、フィクションながら現実離れを覚えるという奇妙な感覚すら生んでしまった。(主にクライマックスの展開)

映像面では、水の表現は言わずもがな、タコのハンクが今にも醤油をつけて食べたいくらいに素晴らしくタコだった。







24位『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』

ハリポタシリーズの大ファンとして高い期待値で臨んだ反動もあったと思うが、少々肩透かしというか、食い足りない感じが残ってしまった作品。映像面はもう文句なしで、様々な魔法生物の生き生きとした姿が魅力的だったし、何より主人公・ニュートの“儚さすら感じさせるイケメン”具合がピカイチであった。彼の飄々とした立ち回り・キリッと光る眼光・抜けた表情と、流石新シリーズの主役に選抜されただけはあるな、と。

しかし肝心の物語が、爽快感やカタルシス、何より「楽しさ」に欠ける作りだったのが惜しい。虐待を受けた人間が爆発させる闇、そして辿る末路。虐待はハリポタシリーズのメインテーマであり、かくいうポッターもその半生は虐待と切っても切り離せない。ハリポタ世界では虐待からのホグワーツが対比構造にあったのに対して、ファンタビでは魔法世界内の虐待がその被害者に酷な結論を与えてしまう。そのテーマの重さや魔法界の闇の側面を描くことそのものはいかにも「ハリポタ的」だが、それは原典シリーズの後半で幾重にも重厚にやり尽した部分でもあり、新シリーズでも“そっち”をやるのか、という感覚に襲われてしまったのだ。もっと単純明快に、魔法生物にワクワクして・燃えて・萌えて・時にビビって・ときめいて、そういう物語が観たかったのかもしれない。「新シリーズ1作目」なら、余計に。

グリンデルバルドを話の中核に据えるのは面白いし、ヨーロッパとはまた毛色が異なるアメリカの魔法社会を描くのも魅力的だ。この時代のアメリカにおけるアメリカン・ドリーム感覚というか、ヨーロッパのような伝統・気品とは違うハングリーさやせわしなさがまた新鮮で、ニュートがしっかり“異物”に見える演出も見事だった。舞台説明は一通り終了しただろうし、ぜひ2作目に期待したい。







23位『疾風ロンド』

「東野圭吾原作×阿部寛主演のコメディ&ミステリー」と聞いて想定されるものはしっかり観られる作品で、裏を返せばそこから突出した面白さや予想外の魅力には欠ける作品。ある意味、座組みにこれだけ真摯な出来上がりもないだろう。二転三転する展開は流石の東野作品だし、阿部寛の緩急見事なコメディ演技も安定の出来。ムロツヨシや堀内敬子といった粒ぞろいな面々が脇を固めるのも隙がなく、確かにこれで面白くない訳がないのだ。ただ、それに尽きてしまう面もあるのだ。

クライマックスでは、大島優子とムロツヨシの雪上大立ち回りが豪快に演じられ(もちろんスタント込みだと思われるが)、おそらく(作中で単語まで出てきていた)GoProで撮られた臨場感抜群の“滑り”シーンは、一見の価値がある。とはいえ、そのシーンをやりたいがための演出がちょっと雑すぎたかな、という思いも拭えない…。あと、スキー場で飲むビール、めっちゃ美味しそう。







22位『手裏剣戦隊ニンニンジャーVSトッキュウジャー THE MOVIE 忍者・イン・ワンダーランド』

実質「トッキュウジャー真の最終回」と言うべきか、むしろ当時現行だったニンニンジャーのドラマパートが割を食うくらいに、トッキュウ側が美味しかった作品。ラストの巨大戦が夜戦&水辺の廃工場という劇場版では中々観れないシチュエーションだったり、忍者村での驚異的なスタントアクションだったり、ただ両戦隊のキャラクターや物語だけに甘んじない攻めの姿勢が観れて面白かった。まずもって開始早々の「トッキュウ1話オマージュ」だけで泣ける。トッキュウジャーは流石の小林脚本と言うべきかTV本編終盤の展開がエモーショナルすぎて、もはや「彼らが存在しているだけで泣ける」という訳の分からない感覚を誕生させてしまった…。今作はその感覚をしっかり土台にした作りだったし、ニンニンジャー側もついつい勢い一辺倒になるところを「ちゃんと帰ってくる」というホームドラマに寄せたのは良かった。ただ、無いもの強請りかもしれないが、その感動に浸っている自分の尻を良い意味で蹴り上げてくるドライブ感は無かった。







21位『X-MEN:アポカリプス』

これにてX-MENの新三部作が終了…と言いたいところだが、実情は累計六部作の完結編(?)のような性格がある一本。ブライアン・シンガーが抱いているであろう『X-MEN: ファイナル ディシジョン』への恨み節がこれでもかと炸裂する作品で、もはやこの作品だけ観た人は意図するところがほとんど分からないのではないか、とも思えてくる。その執拗なまでの恨み節を是と取るか非と取るかで感想が分かれそうではあるが、確かにここまで綺麗に過去作と向き合った最新作を作られると、正直ズルい。良い意味で、ズルい。

とはいえ私個人は『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』がとても好きで、新たなプロフェッサーとマグニートーのフレッシュ&ホモセクシャルな雰囲気が気に入っていただけに、「新たなX-MEN」が結局「これまでのX-MEN」に統合してしまった寂しさというか、惜しさのようなものも感じてしまう。ブライアン・シンガーが得意とする広いセットでの特撮アクションは、由緒正しいアメコミ映画でもあり、ともすれば泥臭い撮り方とも言えてしまい、私が覚えた『ファースト・ジェネレーション』のオサレさとは一種対極にあるのかもしれない。まあ、前述の“統合”については、前作『フューチャー&パスト』の時点で既定路線だったとも言えるが。(余談だが、『フューチャー&パスト』の改変によって『デッドプール』という作品が成立できるという“逃がし方”は、本当によく考えたな、と思う)

マイケル・ファスベンダー演じるマグニートーの森での一連のシーンはとっても「X-MEN!!!」という感じで、この差別を土台としたやりきれなさ、それでも果敢に前を向いて戦っていかなければならない宿命を、キャスト陣が真摯に演じていたのは痛いほどに伝わってきた。「X-MENサーガ」は今後もウルヴァリン完結作やデップ―2と続いていくが、やはり私はどうしても、マイケル・ファスベンダーとジェームズ・マカヴォイの本シリーズでの活躍が今一度観れないものかと、渇望してしまうのだ…。


※※※


ということで、まずは21位まで。気付けば9,000字超で、長々と書いてしまった…。明日更新予定の「結騎了の映画ランキング2016 EPISODE II」では、20~11位を語ります。どうぞよろしく。


【目次】
EPISODE I(~21位)
EPISODE II(~11位)
EPISODE III(~6位)
・EPISODE IV(~1位)


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