こんにちは、結騎 了(@slinky_dog_s11)です。
嫁さんの弟、つまり義弟が今年から就活開始ということで、先日それについてゆっくり話す機会があった。彼の大学は就職にかなり力を入れているところらしく、学内でも「SPI講座」「自己分析セミナー」等が開かれているらしい。彼も友達と一緒にそのいくつかに参加してみたというが、いまいち「ピンとこない」ということを話していた。
彼の話を聞いていて感じたのは、「就活」というのは実質初めて「自分でレール引く作業」なんだな、ということ。それまでも、高校受験・大学受験と人生の岐路はあったと思うが、そこには担任の先生や両親のアドバイスが強く影響を与えていたのだろう。もちろん、最後に志望校を決めるのは本人なのだが、その本人を精神面・情報面・勉学面で支える周囲の人間がいたことは確かだ。
しかし、「就活」はそういう人がごそっといなくなる。手取り足取り世話を焼いてくれる親もいるとは思うが、結局は本人が自分から動いてみて初めて周囲と連動し始めるような、そんな「いちからレールを引く作業」が求められるのではないかな、と。だから、「分からないことが分からない」。業界を分析する、確かに必要かもしれない。自己を分析する、確かに必要かもしれない。でも、それが果たしてどれくらい「就活」というレールを引く上で役に立っているか、皆目見当がつかない。だから、「ピンとこない」。霧の中を歩くようなものである。そりゃあ、不安で仕方ないだろう。
おまけに、世間では「就活解禁!!」「今年も厳しい!!」という情報が踊り、リクナビやマイナビは本人を精神的に追い詰める文言ばかりで殴ってくる。取りあえず合同説明会に行けばいいのか? 取りあえずエントリーとやらをしてみればいいのか? その「取りあえず」はどの程度の「取りあえず」なのか、それが分からない。全体像やゴールまでの工程が分からないので、何をやったら良いかも分からない。周りが何か色々やってるから、取りあえず自分も何かやらなきゃならない。…おそらく、こういう「形のない焦燥感」にクラクラしている就活生が多いのではないだろうか。義弟も、まさしくそうであった。
そんな義弟に、自分もリーマンショック以降の状況が激変した就活を経験したひとりとして、こんなアドバイスをした。「取りあえずいくつか個別の説明会に行って、そして面接を受ければいい」。彼は「そんなの当たり前だろ」という表情を浮かべたが、その理由をひとつひとつ説明していった。
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就活生の皆さんは、就活にどんなイメージを持っているだろうか。とにかく業界を研究して、対策本でエントリーシートの文言を考えて、面接の答え方もハウツー本に赤線引いて覚えて…。そういう、「情報戦」のイメージが強くはないだろうか。それは、正解である。近年の就活は、非常に特異な情報戦だ。しかし、その情報戦というイメージに付きまとう「事前の情報収集が大事」という印象には、私は半分だけNOを突きつけたい。
就活は、ありふれた言葉で言うのなら、「習うより慣れろ」だ。または、「百聞は一見に如かず」。どれだけ分厚い本で業界研究をしても、どれだけリクナビやマイナビに目を凝らしても、どれだけハウツー本で面接のイメージトレーニングをしても、それは一回の「個別説明会」や「面接」より、薄い。特に就活開始の段階では、確実に薄い。「分からないことが分からない」のに、その「分からないこと」を机に座ったまま分かろうとして、「分かる」はずがないのだ。
興味のない業界でも良い。名前を全く聞かない企業でも良い。心構えなんて何も出来てなくて良い。自分の生活圏内で最も今日に近い日程で開催されている個別説明会に、まずは行ってみると良い。何よりまず、実際に行くのだ。説明会に行くと、その企業のパンフレットが配られ、業務内容や福利厚生の説明があり、現職の人の話があり、今後の面接スケジュール等が説明される。まずは何より、それを体感してみた方が良い。何度も言うが、“たとえその企業に興味がなくても”、だ。
要は、「分からないことが分からない」のだから、「何が分からないか」を身をもって発掘しに行くのだ。いざ説明会に行くとなると、男性はネクタイの締め方から分からないのかもしれない。乗ったことのない電車の路線に乗るのかもしれない。企業の採用向けのパンフレットだって実際にちゃんと見たことがないし、他の就活生が説明会でどんなことを質問しているのかも知らない。その企業で働いている人が、イキイキしているのか、死んだ目をしているのか、どんなスーツや作業着を着ているのか、その業界について業界人がどう考えているのか、スタートしたばかりの就活生は、全部知らない。
だから、説明会に行くのだ。何はともあれ、まずは行くのだ。実際に行ってみると、「あ、就活って“こんな感じ”なんだ」という感覚がきっと湧いてくる。そして、そのまま面接を予約して受けてみるのだ。まずは闇雲に練習してもしょうがないから、取りあえず受けてみるのだ。素っ頓狂な解答をしてしまうかもしれないし、赤っ恥をかくもしれない。でも、その「最初の面接」さえ終わってしまえば、「その企業が聞いてきた質問事項」「他の就活生が答えた内容」「自分が答えた内容に対応する合否」という情報が手に入るのだ。そうして、ここから初めて、やっとこさ「情報戦」が始まる。「分からないこと」「できなかったこと」を「分かった」上で、そこから改めて業界研究や自己分析をやってみるのである。脳内で、終わった面接を反芻しながら。
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「説明会や面接に行かず情報だけ調べて闇雲に不安になる」という状態は、例えば学校のテストの前にテスト範囲とされる教科書のページをパラパラとめくって「やべ~」と嘆いているようなものだ。まずは問題を解いてみて、そして間違えた問題の答えと解説を読んで、そしてまた問題を解くのだ。就活も全く一緒である。まずは、とにかく、実際にやってみる。部活も同じで、まずはやってみて、トライ&エラー。勉強も、ひたすらにトライ&エラー。就活も、構造は全く同じなのだ。
だから、私がとにかく就活生の皆さんに伝えたいアドバイスは、「取りあえずいくつか個別の説明会に行って、そして面接を受ければいい」なのだ。ろくに実地経験もないのに情報や想像だけで頭でっかちになっても、それは本質的には意味を成さない。ちゃんと戦う相手の輪郭を把握した上で情報を仕入れないと、無駄に時間と労力を消費するだけである。説明会に何度か通って、面接を何度か受けて、そして何度も落ちて、そうすることで「業界研究」も「自己分析」も、本当に自分に求められている入り口が見えてくる。
料理を全くやったことがないのにレシピだけ熟読しても、卵の割り方すら分からない。それが第一歩を踏む前の就活生だ。レシピには、わざわざ卵の割り方なんて書いていないのだ。だから、とにかくやる。やってみる。やってみてから考える。それが、とにかく数を受けなければならない昨今の就活生が最初に超えるべきハードルであると、私は思う。
義弟を含む就活生の皆さんの健闘を、心から祈ります。
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