こんにちは、YU@K(@slinky_dog_s11)です。
これを書いている時点で第3話まで放送されている「動物戦隊ジュウオウジャー」。史上40番目のスーパー戦隊ということで、サンバルカン先輩もライブマン先輩もガオレンジャー先輩も魅力を振りまいた超絶王道モチーフ「動物」を司る“群れ”の物語。いやね、正直、これがめちゃくちゃ面白いんですよ…。なんなんだ、この超序盤における謎の安定感は。40番目というメモリアル戦隊なので作り手にも一段と気合が入っているのか…。
前作ニンニンジャーも言わずもがな大好きな訳だけど、こちらは「何が起こるか分からない“おっかなびっくり”の雑多感」みたいなのが当初のウリで、その後彼らなりのラストニンジャとか師匠と弟子(同士のライバル関係)にシフトしていったので、そういう意味でジュウオウジャーの「面白い」とはまた全然違うよなあ、と。ジュウオウジャーはすでに20話近く観てるんじゃないかというくらいの堅実な作りと、それでいてベタさと既視感に溺れない新鮮味も散りばめられていて、非常に高い次元でまとまっている印象を受ける。(以下、考察とか感想とか所感を徒然と…)
脚本の香村純子さんが満を持してのメインライターということで、長年の経験則がこれでもかと発揮されているのか。例えば第3話の大和&アム回。アムの無邪気ながらしっかりしている性格を描きつつ、同時に(番組的に最も目立たせたい)レッドである大和をちゃんと引き立てる話にもなっていて、キーアイテムである“王者の資格”(四角にかかってる?)かと思いきやそれが武装のキリンだったり(唐突な新アイテムをいかに唐突感を薄めて登場させるか、という観点)、土砂崩れに埋もれることで2パターンの合体をスムーズに連続披露する流れだったり、大和が純粋な人間でなくなっていきそうな前フリも挿入しつつの、お見事な起承転結。いやはや、細かな手入れが行き届いたシナリオに思わず拍手ですよこんなの…。
どう考えてもマインクラフトな流行りに乗っかったと思われるキューブ要素も、最初はどうなることかと思ったんですね。だって、あの綺麗な立方体は自然界には通常あり得ないから、自然の賜物である「動物」との相性はどうなんだ、と。食い合わせが悪そうで…。でも蓋を開けてみると、そもそものジューマンの世界が立方体に溢れていて、通常の動物とは違う進化を遂げた彼らなりの“人工物”という作中ロジックが割と腑に落ちる配分だった。ジューマンという二足歩行の動物が作ったからこそ、自然界には無い綺麗な形。もっと言うと、あの“王者の資格”が彼らにその概念を与え特殊な進化をもたらしたオーパーツなんじゃないかとか、色々な妄想が捗るわけですよ。
思わず「動物、プラス人間!」と言いたくなる4+1のメンバー構成は、やはり「未来戦隊タイムレンジャー」を思い出すところ。さっそくジュウオウジャーでも繰り広げられているが、いわゆる“現代にタイムスリップしてきた武士メソッド”はやはり固い。「獣電戦隊キョウリュウジャー」のウッチーも同じで、慣れない文化に驚きつつ接していく異邦人に他メンバーが突っ込むだけでお話の推進力としてはバッチリ。人間の文化を学んだジューマンたちが、後に「人間の文化」から「人間そのもの」に関心をシフトしていく下地も完璧である。
第1話における「人間だって動物だっ!」という大和のセリフは非常に上手にこの番組を象徴していて、問答無用で“生きとし生けるものを守る”というベッタベタなヒーロー特撮の動機付けに成功している。そもそも第1話で人間の建造物等を一切出さなかったのも上手い。純粋に自然が破壊され、草木が燃え動物が逃げ出す。そしてそれを「ゲーム」と称して殺戮を楽しむ輩がいれば、そりゃあ、問答無用に「悪・即・斬」である。重要なのは、視聴者に過不足なく「あ、コイツら許せねぇや」と思わせることなのだ。
さて、偉大なる幻の大先輩カーレッドやカクレッドに弟子入りする新米戦士ジュウオウレッド… という冗談は置いておいてジュウオウイーグルこと大和だけど、鳥のジューマンにどんな力を分け与えられたのかはこの番組の大きなポイント。そもそもあの変身アイテムを使っただけでイーグルの力を行使できるのは「おかしい」訳で(WindowsにどんなUSBをぶっ差してもMacにはならないように)、その「おかしさ」については劇中でもしっかり言及されている。だからこそ、大和は人間のままでいられるのか・そもそもすでに純粋な人間ではないのか、このあたりが気になるところ。個人的には、「ジュウオウヒューマン」的な落とし所を期待したい、が…。
というか、やっぱりすごいのはOPテーマ。なんだあれ最高かよ。もうここ数日ずっと脳内で流れてやがる…。Bメロからの「イーグル!(ドドドン)シャーク!(ドドドン)」がとにかく脳内再生楽しすぎて「本能~ 覚醒~~」で死ぬほど盛り上がる。サビの「王者」と「ジュウオウジャー」をかけた行ったり来たりのフレーズ構成は「海賊戦隊ゴーカイジャー」のOPを思い出す感じで、言葉遊びとリズムの符合がテンドンで美味しくなるパターン。非常にキャッチーで、それでいて力強く、覚えやすい。最高かよ…。劇中での使われ方もお見事で、第2話での乱戦の後に野生解放状態のジュウオウジャーが爆煙の向こうに並び立つのを捉えたカットで ダン!ダン!ダン! ア~~ア~~アァア~~ と流れた時はタイミングがあまりにも絶妙すぎて思わず鳥肌が立った。
演出はさすがの柴崎監督(~第2話)で、この人は個人的にはライダーより戦隊の方が向いてるんじゃないかな、というのが正直なところ。バラエティ豊かで派手だけどとっ散らかってなくて、それでいてギミックの見せ方と工夫がとにかく楽しい。武器の組み替えもしっかり見せつつ斜めからのカットで心なしかパースをつけるように写すし、必殺技での5人が爪になる演出はとにかくかっこよすぎる。野生解放状態のイーグルの視点は、ドローンにカメラでも積んでるのかな?(そういえば「トッキュウvsキョウリュウ」でも印象的な空撮シーンがあったけど、近年東映が買ったのだろうか)
武器のギミックといえば、あれですよ、ジュウオウイーグルの蛇腹剣。どうしても「パシフィック・リム」のチェーンソードを思い出して胸が熱くなるのだけど、あれが鞭のようにしなって猛獣使いの演出になっているのが面白いのよね。ちゃんと1+4の構図が活きてるし、名乗りシーンが終わったら自動的に剣が手元にある、というのが絶妙にかっこいい。イーグルだけの専用武器というのもどことなく「マスター(主従関係)」っぽさがあるし、しかし実際は奔放な4人のジューマンに振り回されまくる超ツッコミ苦労人というギャップも味がある。大和がまた演技が上手いんだ。
他にも、巨大戦で撃破した敵がブロック状で四散するとか、煽りのカットによる巨大感の魅せ方が凝ってるとか(特に第1話)、近年稀に見るガチ殺戮を繰り返すデスガリアンとか、名乗りの時のイーグルの指がかっこよすぎるとか、セラさんが期待通りのツンツンっぷりで素晴らしいとか、セラさんがとにかく美しいとか、セラさんがお風呂キャラというのはどうしようもなくドギマギしてしまうとか、セラさんのEDの踊りめっちゃ可愛いとか、とにかく期待ポイントを挙げていけばキリがないジュウオウジャー。
このまま陽性の雰囲気を保ちつつ、しっかりシビアなところはシビアに、でも突きつけた王道感というバランスで一年間走り抜けて欲しいなあ、と。ジュウオウジャー、超絶!楽しみですな。
日曜朝から「あざますっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」しかなかった。 pic.twitter.com/ALSun9yVZi
— YU@K (@slinky_dog_s11) 2016年2月28日(あわせて読みたい)
・乗り換え変身の無意味さから読み解く「烈車戦隊トッキュウジャー」
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