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Channel: YU@Kの不定期村
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『ポケモンGO』が流行った理由は、体が頭が知っている

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こんにちは、YU@K(@slinky_dog_s11)です。

私は自分のことを素直な性格ではないと思っているので、この大流行中のゲームアプリ『ポケモンGO』についてブログで記事を書いたらどこか“負け”のようにも感じていたのだけど、それでもちょっと思うところをこぼしておきたいような、そんな気分に苛まれて今これを書いている。…というのも、いやはや、単に「すごいなあ」と。要はこれだけなのだ。これ以降に書いてあることは、おそらくこのアプリで遊んでいようがいまいが10人中10人が「なにをそんな当たり前のことを…」と思ってしまう内容だけども、つまりは「ポケットモンスター」というブランドがこの20年間何をやってきたかを思うと、“世代”としてはどうしても振り返りたくなってしまうのだ。

結論から書くと、「通信で対戦&交換ができる!」がウリだった赤緑のころから、ポケモンというゲームはずっと「外向性」をひとつのキーワードにしてきた。つまり、ゲームはひとりでじっくりやる“だけ”のものではなく、友達や兄弟と一緒にやってもいいんだと。それも、同時にファミコンが繋がれた画面を見るのではなく、各々がデバイスを持ち、各々の画面を見ながら、でも“同時に”遊んでいる。この形を、結局のところ ずーーーっと 推し進めてきた“だけ”なのだなあ、と。「公園に集まってゲームをやる」という図式は、改めて考えると非常に面白い。

通信ケーブルに始まり、ポケットピカチュウもそうだし、ハートゴールド&ソウルシルバーの時に同梱されたポケウォーカーも同じ志向だ。“ゲームが目の前の画面だけで完結しない”、それが、ポケモンがずっと挑戦してきた「外向性」であり、それは依然変わりなく、今度は『ポケモンGO』という舞台で炸裂した。





更に言うと、このアプリがすごいのは、ゲーム自体に目的説明がほぼ無い上に、操作説明すら満足に無いという点だ。それはなぜかというと、「ポケモンという世界観はモンスターボールを投げて野生のモンスターを捕獲し図鑑完成を目指すもの」という前提条件が世界中ですでに共有されているからだ。いや、当たり前なのだ。今これを読んでいる全ての人が「そんなの当たり前だろ」と今にもブラウザを閉じようとして、しかもここ数日で同じ論旨での褒め感想は世界中に溢れていて、私もそれを腐るほど目にしたけれども、それでも、それでも今一度自分でこうやって書きたくなるくらいに、単純に「すごい」と思うのだ。

だって、「ポケモンという世界観はモンスターボールを投げて野生のモンスターを捕獲し図鑑完成を目指すもの」って、このブランドに飼いならされた自分たちには1+1=2にも等しいくらい当然のルールだけど、改めて考えたら狂気の世界に他ならない。野生生物を自己都合で捕獲して図鑑の完成を目指す …って一体どういうことなのかと。図鑑って普通は“本”なのに、今や誰もが「捕獲すればデジタル図鑑に自動登録される」ことは知っているし、そこに何の疑いも抱かない。勝手に野生生物を捕獲して良いのか、その倫理的な問題にも、誰も“今更”何も言わない。モンスターボールって一体何なのか。なぜ紅白の球で野生生物を隷属できるのか。そこへの疑問はなくとも、それでも世界中の人間が“キュウン!”という音と共にあのボールが肥大化する様を知っているのだ。「そういうもの」「そういう世界観」「そういうルール」として、完全に成立している。





いや、本当に、マジで、単に「あたりまえのこと」しか言っていない。これは何も目新しくもない記事だし、これ以上読んでいただいても大して面白くないことを保証したい。しかしそれでも、今一度じっくり考えたくなるというか、ついつい感慨深くなってしまうのだ。“これが全世界にこのレベルで浸透しているのって、すごくない?”。いやすごいでしょ。半端じゃない。

しかも、作中世界観とゲームシステムのダブルで「外向性」をずっと推し進めてきたからこそ、世界中の人間が何の疑いもなく野外に繰り出す。スマホひとつが、これだけの人間に靴を履かせる。日本においては、この炎天下に外に繰り出させる。お金がもらえる訳でも、何が得られる訳でもなく、“動く絵”を求めて数時間も外をうろつく。いやはや、当たり前だけど、本当につまらないくらい当然のことなのだけど、やっぱり「すごい」って、ただただそう思うのだ。

近所のジムスポットを通りがかったら、年配の夫婦が車を路駐させ『ポケモンGO』に勤しんでいた。マクドナルドに行くと、高校生の集団が「やったー!卵が出た!」と叫んでいた。スポットが多い通りを車で通りがかったら、見るからにポケモントレーナーな人たちがスマホ片手にズンズンと歩き回っていた。私が住む辺鄙な片田舎でもこんなに分かりやすく流行が目に見えるのだから、都会は比にならないのだろうな、と。私もこれまで心のどこかで少なからず「スマホのガチャってただの絵なのになんで課金してまで買うんだよ…」と思っていたけれど、阿呆面で手のひら返して「フシギダネが近くにいるぞ!おい!お香!お香買うか!?」と鼻息を荒くしてしまう。不思議なくらいに、飼いならされている。





ポケモンってすごいなあ、本当に。マジでもう本当にただそれだけを徒然と書いているのだけど、どこまでいってもこれに尽きる。言わずもがな、これが全く同じシステムで『モンスターファームGO』だったらこんなに流行る訳がないし(個人的にはやりたいけれど!)、『デジモンGO』でもこんなに流行る訳がないし(個人的にはやりたいけれど!)、『妖怪ウォッチGO』だったら子供たちにしか流行らなかったのだろう。『妖怪ウォッチGO』では、ジムスポットに路駐する夫婦を生み出すことはできない。

20年かけて積み上げられたポケモンのブランドパワーそれこそが、今まさにアプリという形で火を噴いている。「野外で野生生物を捕獲するゲーム(物語)」という世界観を、その作中設定としての知名度、そしてゲームシステムとしての「外向性」、両面で20年間コツコツと積み上げてきた。このまま『ポケモンGO』が大流行を続けるのか、一時的なもので落ち着くのかは、私には予想がつかない。しかし、つい先日野生のフシギダネに逃げられてしまった時のあの焦燥感・喪失感・怒りの感覚は、「飼いならされてきた」からに他ならないのだな、と。ただただ、そう思うばかりである。

結局なにが言いたいのか分からないって? 「すごい」ってことですよ。


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