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Channel: YU@Kの不定期村
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残り2万7,000時間。「遊星からの物体X」、“それ”がもたらす悲鳴を聴け(サンプル)

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こんにちは、YU@K(@slinky_dog_s11)です。

「生物」という文字を、貴方は何と読むだろうか。「せいぶつ」、「いきもの」。しかしこの映画に限っては、私としては「なまもの」と読んでしまいたくなる。このレビューを書くにあたって数年ぶりに観返したが、1982年の映画とは思えない映像迫力であった。昨今に比べるとVFXが映画に使われるなんて微々たるものだった時代、1/1スケールの「生物(なまもの)」が粘着質な肌と液体をまき散らしながら南極観測基地を恐怖のどん底に陥れる。そんなSFホラーの名作であり金字塔が、「遊星からの物体X」だ。

舞台は1982年の南極。ノルウェー隊のヘリが一匹の犬を追ってアメリカ南極観測基地にやってくる。ヘリに乗ったノルウェー人は血相を変えてその犬を追い回し撃ち殺そうとするが、巻き込まれたアメリカ人隊員の反撃もあり命を落とす。犬を保護したアメリカ人たちはチームに分かれ真相を解明すべくノルウェー基地へと向かうが、そこで発見されたのは大きなUFOと氷の棺だった。“何か”がこの棺の中から現れ、ここの隊員たちはその“何か”によって全滅したのだろうか。一方観測基地では、その犬の中にいる“何か”が残った隊員たちのすぐ側をウロウロと歩き回っていた…。





原題は「The Thing」。直訳すると「それ」だが、この潔い意味不明なタイトルが何よりも不気味である。「それ」に名前なんてもはやなく、姿形を変えてとにかく我々を襲ってくるのだ。寄生し、殺し、化け、現れる。誰がすでに「それ」なのか分からなくなり、通信手段もなく、南極基地という(実質的)密室に閉じ込められたまま疑心暗鬼に陥っていく隊員たち。擬態されれば見た目はいつもの仲間。その不気味さが恐怖を加速させる。この「The Thing」を「遊星からの物体X」と名付けた邦題も、中々にオシャレである。「遊星」は「惑星」とイコールの意味を持つが、“遊”という漢字の字面が不気味さを煽る。「それ」は何の目的で地球にやって来たのか。侵略か、寄生か、もしかしたら彼らにとっては友好的な行為なのに生態系の違いで“侵略”に映ってしまうのかもしれないし、もっと言ってしまえば亡命してきた生態系なのかもしれない。そんな想像をしてしまうほどに、「それ」たちの背景は全く明かされない。ただ淡々と隊員たちを恐怖で支配していく。そこに“遊”とは、中々皮肉なネーミングであると言える。

冒頭、軋むような緊張感を持ったBGMが流れながら、ノルウェー隊員がヘリから犬を狙撃する。綺麗すぎて眩暈がするほどの雪の上を、犬がイキイキと駆けていく。その犬がまた一段と可愛いがために、初見時は「なんでこいつら犬を撃つんだ?」「ハンティングか?」とノルウェー人たちに疑いの目を向けてしまう。なんてことはない、“ハント”されていたのは彼らの方だったのだ。中盤以降、ノルウェー基地の惨事を通して物語の全体像が分かっていく流れで、「じゃあ、さっきの犬が危ないんじゃ…」と思った時にはもう遅い。惨劇は幕を開けて……






■完全版は2015年12月末発売予定の電子書籍『THE BEST』(0円)に収録予定。詳しい内容や進捗状況はこちら





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