こんにちは、YU@K(@slinky_dog_s11)です。
やはりあの頃の盛り上がりは一部の界隈で常軌を逸していたと今でも思う。日本では久しく提供されなかったアレが、それも海の向こうで出店された後に日本に上陸するというのだ。噂を聞きつけて開店早々並んだ私のような奴らは、その見事なアレっぷりに感動の涙を流し、一心不乱に喰らい、遂にはお店を出るとまた列の最後尾に並んだのであった。
デカいロボットとデカい怪獣がガツガツと肉弾戦をする映画、「パシフィック・リム」。ある日世界中をどん底に陥れた未曾有の巨大怪獣災害。立て続けに発生するそれに対抗すべく、国際的な技術協力の末に誕生した巨大ロボット・イェーガー。やがてそのロボットと怪獣の戦いは一種のイベントのように認知されていったが、ヤツらの侵攻は年々勢いを増すばかりであった…。
この映画、開始15分で「面白い!」「いいね!」と思った人は、おそらく2時間後も「面白い!」「いいね!」と叫んでいることだろう。それほどに、開始15分間に本作のエッセンスが絶妙に詰め込まれている。同時に、全体的な作劇において驚くほどの「軽量化」が実現されているのだ。この記事では、主にその2点に絞って「パシフィック・リム」について解説していきたい。
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「見るべきは空の星ではなく海の底だった…」。そんなモノローグから開始する物語は、約5分間で世界情勢をダイナミックに淡々と解説していく。サンフランシスコを襲う怪獣・アックスヘッドは、登場と同時に橋を破壊し無数の車を海に落下させる。戦闘機の迎撃をものともせずに進行するも、やがて討伐されたことが語られる。その頭蓋が博物館らしき場所に展示されていたりと、ある程度の期間と世間の反応を思わせるカットが入る。が、続けて2年後にカナダに怪獣が出現。各国の首相の表明や怪獣の血による汚染、そしてイェーガー建設の歴史が語られる(ここでドリフト理論を説明せずに後回しにしているのが上手い)。「イェーガーのパイロットはロックスター並の人気を誇っていた」という解説がまたニクい。このロックスターという形容が非常に分かりやすく、俗世間の熱狂や認識を想像するのに容易だ。つまりここで、「怪獣出現という災害に人類が少し油断して(慣れちゃって)いるな」、という嫌な予感をバッチリ持たせてくれるのだ。
そして運命の怪獣・ナイフヘッドの出現。劇中設定2020年。体長96m、体重 2,700tの巨体は、一般市民を乗せた漁船の付近に出現した。迎え撃つは主人公ローリー・ベケットとその兄ヤンシー。まさにロックスターのごとく“仕事”に向かう彼らの慣れっぷりが面白い。テレテレレ~ ここで流れる渇いたギターのBGM。本編でしつこいまでに流れるこのメインテーマを、開始5分あたりで一発キメてくれるのがたまらない。4つ打ちのリズムが刻まれる中、兄弟は着々とスーツを装着していく。ただ体にハメていくだけでなく、ガチャンとしたらウィーンという予備動作が随所で発生する。細かいシステムとギミックが画面を埋め尽くしながら、「俺たちは勉強でもスポーツでもヒーローではなかった…“が!”」というローリーのナレーションがワクワクを増幅させる。
タラランタララー テーンテーンテーンテーンテー(ドゥン ドゥン ドゥン ドゥン) テーンテーンテーンテーンテー(ドゥン ドゥン ドゥン ドゥン)「テンドー、昨日のデートはどうだった?」「ブレインハンドシェイクだ」「ペントコスト司令官から指示が出た」<ブレインハンドシェイク、開始します>「さあ、俺の中に入ってこい」「年寄りからどうぞ?」<ブレインハンドシェイク、開始!>――――ッッッ!!ドリフト、とは……(略)…強くなる!!!タラランタララー テーンテーンテーンテーンテー(ドゥン ドゥン ドゥン………
■完全版は2015年12月末発売予定の電子書籍『THE BEST』(0円)に収録予定。詳しい内容や進捗状況はこちら。
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