こんにちは、YU@K(@slinky_dog_s11)です。
年の瀬、「YU@Kの不定期村」2015年最後の更新ということで、個人的な映画ランキングベスト10を書きつつ1年を振り返ってみようかと。といっても以前Twitterでガッツリとやってしまって(こちらにまとめてあります)それで半ば燃え尽きてしまったのですが、まあ一応映画をメインに扱ってるブログなので、「スター・ウォーズ フォースの覚醒」を含めた最終版を書き残しておくことがケジメかな、と。
今年は本当に楽しい作品が多くて、同時に、「なにもお前まで今年じゃなくとも…」と言いたくなるくらい世代を超えて愛される有名シリーズの最新作が軒並み首を揃えるという豪華絢爛な1年だった。そしてそのどれもが割と“ちゃんと面白い”ってのは映画ファン的にたまらなくて、待ち望んだ作品を観るために映画館にウキウキしながら通う機会が多かったなあ、と。とはいえ今年はたったの49作品しか観れてないので、来年はもうちょっと数を増やしたいところ…。
さて、ではでは早速10位から。
10位 『ミッション:インポッシブル / ローグ・ネイション 』
もう阿呆か、ってレベルで今作も体を張るトム・クルーズ。予告で一番印象的だった飛行機しがみつきアクションを開始数分で魅せて、その勢いのまま一気にお馴染みのOPに突入する構成が素晴らしい。決して派手さは無いけども、堅実に「すごいアクション」と「味のあるドラマ」を積み上げるというこの渋い作りが堪らない。シリーズそのものがファンを獲得してるからこそ出来る作風なのかな、と。また、イーサン・ハントの物語以上にトム・クルーズの物語になっていて、「もう十分活躍したんじゃない? 第一線退いたら?」「いやいや、俺はまだやるよ」って受け答えを、スパイ活動を通して俳優論にも通ずるように演出するそのメタ的なシナリオが本当に素敵。「俺たちのトム・クルーズは期待を裏切らないトム・クルーズ!」ってのをしっかり味わえるシリーズ最新作だったと思う。
9位 『コードネーム U.N.C.L.E.』
完全にノーマークだったのだけど、Twitterでの評判が良かったので鑑賞したら好みドンピシャ。この映画、スパイ映画あるあるやその手のジャンルのパロディが多く、一見すると「それだけ」の薄い映画にも見えるんだけど、それをとことんやり抜いて「カッコいい映像やカットを観せてやるぜ!」が最後の最後まで失速しない、最高に割り切った珍作だったなあ、と。ここまでやられたらもう最高に楽しくて仕方ない。「それっぽい」もしつこく積み上げれば「それ」になる。「分かってんだろ?」と言いたげなドヤ顔なシナリオにドヤ顔ばかりするキャストの共演がとにかく楽しく、それでいてラストの勝ち方もちゃんと前振りとロジックがしっかりしているし、男同士のちょっとホモホモしいやり取りもベタながら見応え抜群。予告を観て「なんか面白そうだな」と感じるその「なんか面白そう」をとことんつるべ打ちしてくれるので、ものすごくストレートに期待値を満たしてくれるタイプ。サンドイッチを食べるシーンなんか映画館で笑いを堪えるのに必死だったし、むしろヘンリー・カヴィルはスーパーマンよりこっちがハマって見えた。続編が心底観たいぞ…。
8位 『チャッピー』
非常にイっちゃってる映画であることは間違いないというか、(前にもこの例えを使ったけども)倫理書をガソリンで煮込んでる系の作品なので、ものすごく好みは分かれるのかなあ、と。チャッピーをひたすらに人間の子供らしく演出しておきながら豪快に迫害させて心身ともに傷を負わせまくるその嫌らしさが半端じゃない。心を抉られながら、どんどん「じゃあ命って、自我って、なんだろう」と考えていたらラストに一気に三段階ほど常識を飛び越えた展開がやってくる。あまりにも呆気なくそれらが為されるために、「え?」となっているうちにあのゴテゴテの音楽と共にエンドロール。いやあ、ここまで頭を殴ってくる映画も珍しいなあ、と。良くも悪くも“テンション”に満ち満ちてるんだけど、その脂ギッシュで悪趣味な倫理観に拍手。
【個別レビュー】
・「チャッピー」が内蔵する手塚治虫と芥川龍之介
7位 『アベンジャーズ / エイジ・オブ・ウルトロン』
この映画の中身そのものというより、ここまで世界的に売れてるシリーズにおいてこういう挑戦的な物語を持ってくるMCUの覚悟みたいな部分が個人的に大好きな一作。「え? アベンジャーズってむしろ害悪じゃね?」「アイツの責任だろ…」「こいつらやってること尻拭いかよ」というモヤモヤをわざと抱かせにくるその作劇が、しっかり翌年のシビルウォーに繋がっており、それでも映像的にはこれでもかとヒーロー共演祭りになっているというバランスがお見事。「遺恨を残すとはこうやるんだよ!」というプロの意地が垣間見える。次作の「アントマン」が明朗な作風だったからこそ、輪をかけてAOUの殺伐さが沁みるというフェイズ2の締め方も上手い。宣伝で色々騒がれはしたけど、国内でもちゃんと数字として結果を残せたようで、ひとまず何より。
【個別レビュー】
・「アベンジャーズ / エイジ・オブ・ウルトロン」は駄作でも傑作でもない
6位 『ジュラシック・ワールド』
終わってみれば人類の科学による進歩を真っ向から否定するようなメッセージにも見て取れるけど、これぞ正真正銘「細けぇことはどうでもいい!」的な何かがラストに詰まっていた。スーパー恐竜大戦と化したクライマックスの中で、人間の意地とアイデアもしっかり脇を固めているのがこの上なく上手い。ラプトルのブルーが人間たちを助けたのも、「人間と愛を育んだから」と「生存本能からくる利害一致判断」のそのどちらとも取れるロジックのバランスがお見事だし、「俺たちのティラノ!」がやっぱりティラノしてくれると思わず拳を握りしめながら泣いちゃうよね、と。テーマパークが些細なヒューマンエラーで地獄に変わってしまう様も妙なリアルさがあって面白いし、このVFX全盛期で観客の目が慣れている時代にここまでちゃんと「ビビらせて」くれるのはさすが金字塔シリーズ最新作。バイクとラプトル部隊の並走という最高にバカバカしい絵面でめちゃくちゃ燃えられるのはやっぱりすごい。
5位 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』
言うまでもなく、ってほどに各所で語り尽くされてる今年のカルト人気大爆発な一作。個別のレビューでも書いたけど、一見「ただ行って帰ってくるだけ」「ヒャッハーするだけ」に見えて、その実あり得ないくらいに神経質に組まれたロジックがひしめき合っているのがものすごい。当然Blu-rayも買ってもう何度も観てるけど、ここまで緻密にパズルを組んで、その上で遊び心もテーマもたっぷりでインパクト抜群で、更にはVFXの時代に逆行するべく実写アクションやスタントが大盛りで、もうここまでやられたら頭が上がらないよね、と。冒頭15分で物の見事に観客の心を鷲掴みにして、そこでストーリーノルマの8割を語り終えてしまう手腕、エンタメ性とスピード感をことごとく重視したカット割り、誰も真似できない究極のお手本映画という感じがする。
【個別レビュー】
・「マッドマックス 怒りのデス・ロード」をひたすらに因数分解してみよう(サンプル)
4位 『ジョン・ウィック』
犬を殺されたキアヌが殺す、だけの映画なんだけど、私が思うにそこまで単純なもんじゃないよなあ、と。裏社会のディテールが細かくて面白おかしく演出されればされるほど、ジョンはもしかしたら「そっち」の世界の方が幸せなんじゃないかな、と痛感してしまう。妻を失い犬を失い、表社会で彼を支える存在がひとつずつ奪われていく中、なまった体に鞭を打ちながらひたすらに人を殺す不器用で器用な男の復讐劇。最高に哀愁に満ちてるし、この男の明暗のフラつきをもっと沢山観ていたい。ダンスフロアでの多彩なライティングの中でターミネーターのごとく迫り来るジョンの「こいつヤバい」っぷりがこの上なくキアヌにハマっていたし、今からもう続編が楽しみでならない作品。巷でガンフーと言われるアクションも見所で、スッ・ドスン・スッ・ドスン・スッ・ドスンのテンポ感が堪らなくキレッキレ。車内からの撥ね上げ蜂の巣は今年最も興奮したアクションシーンだった。
【個別レビュー】
・【考察】「ジョン・ウィック」の生き様は果たしてバッドエンドか否か
3位 『BORUTO ボルト -NARUTO THE MOVIE-』
正直、加点法で考えたらもう天井知らずで1位どころじゃない。全編通しての見事なファンサービスっぷりと、ナルトとサスケを下手にヘタれさせずにしっかり息子であるボルトの活躍に持っていくシナリオ構成がとにかく上手い。巨大な螺旋丸を作ってからのあの和風のメインテーマが鳴り響く流れは涙なしには見れない。ただ単にボルトの成長譚というだけでなく、不器用な親でもあるナルトの物語だったり、彼と長年対立していたサスケのある種の恩返しの物語であったり、それでいて新時代の忍たちの物語にもなっていて、それらが「どっちつかず」にならず全て高次元でしっかりまとまっているのが素晴らしい。「文句の付けようがない」と口を滑らせたくなるほどの少年漫画アニメのお手本作かと。ただ、シリーズへの思い入れがあってこその映画なので、そこはご注意。
【関連記事】
・【総括】「NARUTO」全73冊+映画2本+傑作「BORUTO」を完走したので1万字かけて感想を語り尽くすってばよ!
2位 『スター・ウォーズ フォースの覚醒』
これを書いている時点ですでに3回鑑賞したのだけど、本当によく出来た映画だな、と。スター・ウォーズの過去6作は私は映画としては決して一級品ではないと思っていて(“スター・ウォーズとして”傑作という認識)、だからこそ今回の「フォースの覚醒」はそれを覆す勢いで「映画として」面白かったのが最も好きなポイント。それでいて、レイという新たな主人公のヒーロー物としてのオリジンになってるのも好みドンピシャ。何者でもなかった存在が独りの世界から飛び出し、出会いと別れを経験し戦いに巻き込まれながら、ついにヒーローとして立ち上がる。だからこそ彼女が“あれ”を手にするクライマックスがこの上なくエモーショナルな演出になっているし、新たな3人の主人公の物語がハン・ソロを軸にしっかり交わっていく構成も上手い。新たなスター・ウォーズとしてこれ以上ない見事なバランスに仕上げてくれたなあ、と。
【個別レビュー】
・【公開日深夜感想】「スター・ウォーズ フォースの覚醒」、その伝承を“認識”せよ。(ネタバレ込み)
・ハン・ソロから読み解く続三部作としての狙い。「スター・ウォーズ フォースの覚醒」の作劇チャート
1位 『セッション』
自分が長年音楽をやってきた、それも打楽器だったというのも大きいのだけど、とにかく一発かまされた作品。しかもその「かまし」が本当に力強かった。メインの2人は悪い意味で音楽馬鹿だし自分勝手だしハッキリ言って狂ってるんだけど、でもその「狂気」って音楽というフィールドにおいて必ずどこかにあるもので、だからこそ肌感覚でそれを感じられたのが良かったなあ、と。あの「狂気」は、フィクションだけど嘘じゃない。ラストの展開も、よくよく考えたら周りの反応とか後処理とかその後とかどうなんだと色々言いたくもなるけど、“そういうことじゃない”というか、あそこで狂人と狂人がシンクロしちゃうという未曾有のデートが繰り広げられた事こそが、この映画のミソなんじゃないかと。あんなラブラブなデートで頭を殴られたら、そんなのインパクトを受けずにはいられないよね…。
【個別レビュー】
・なぜ「セッション」のラスト9分19秒は素晴らしいのか? ~血とビートの殴り合い、恫喝の向こうの涙
※※※
そんなこんなで、今年のベスト10でした。この時期になるとネットでは「映画に順位をつけるなんてそもそもおかしい」という声もチラホラ見かけるんだけど、これって別に単に優劣をつける訳でも(いやつけるんだけど)クオリティを保証するものでもなくて、順位をつけるという行為そのものによってその作品をより深く深く咀嚼できるのが楽しいんだよね。どこまでいっても個人的な好みの話だし、塩ラーメンと味噌ラーメンのどちらが好きかを深く考えると良い感じでお腹が減ってくるよね、ってことなんですよ。…ということで、今年もこのブログで好き勝手色々語ってきましたが、いつも読んでくださった皆さん、本当にありがとうございました。来年もよろしくお願いします。
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