こんにちは、YU@K(@slinky_dog_s11)です。
「クラスタ」という単語がある。言うまでもなく、元は英語の「cluster」。「房」「集団」「群れ」といった意味を持ち、転じて主にTwitter等では「〇〇ファン」「〇〇オタク」に近いニュアンスで用いられる。例えば「アンパンマンクラスタ」なら「アンパンマンを愛好する者たち」といった感じだ。各々、好きな作品名を「クラスタ」の前に置くことで、昨今のネットでは日常的に使用されている。
しかし、私はどうにもこの「クラスタ」という呼称に馴染めないでいる。妙に違和感があり、例えば私は映画が好きなのだが、「映画クラスタ」「洋画クラスタ」といった呼称は“自分からは絶対に使ってやるもんか!”くらいには思っている。しかし、なぜそんなにもモヤモヤを抱えているのか、自分でもよく分からない。この記事では、その謎の要因を探りつつ、オタクの呼称問題について徒然と書き並べてみたい。
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「クラスタ」は私の感覚ではここ2・3年で流行り出した単語という印象だったが、調べてみるとすでに2009年には以下のような記事が書かれていた。
単純にクラスター(Cluster)の単語の意味に群れや房、集団などの意味があります。Twitterで使われるクラスタの意味としては 「○○な人たち」 と言うのを横文字を使ってみましたという感じかな。クラスターと聞いて、クラスター爆弾を思い浮かべた人も居ると思いますが、意味は同じです。 小さな爆弾をまとめたものです。
・ネット(主にTwitter)で見かける クラスタ って何?
2011年にも、webニュースとして扱われている。
■ クラスタを使った例文
「クラスタ」を使って例文をいくつかご紹介します。
・ 昨日、AKB48クラスタが盛り上がってたよね
AKB48を好きな人たち、ファンの人たちが、Twitterや2chなどで盛り上がっていた様子を指す。
・仁の初回って、視聴率23.7%だったんでしょ。実況クラスタも大活躍だったしね。
テレビドラマ「仁」が高視聴率スタートをしたよね。放送当日に、ネットでリアルタイムで実況する人たちもたくさんいたよね。という意味。
・「あなたは何クラスタ?」「私は嵐クラスタです。」
実際、こんな自己紹介はないと思いますが、「あなたは何に興味がありますか?」「私は嵐が好き(の集団に所属している)です」のようなイメージで使えると思います。
――相手のクラスタ関連の発言に、即座に反応できたら「この人デキる・・・」と思われるかもしれませんよ!
・キミは何クラスタ?ネット語「クラスタ」の意味と使い方
私の感覚よりも更に数年の歴史のある呼称だが、今やTwitterを中心にかなり一般的に広まっているのではないだろうか。
もちろんこの「クラスタ」という単語は前述のように「群れ」を意味するので、何もオタク界隈だけには限らないのだけど、それでもその界隈での「作品名+クラスタ」という使用例が根強いように思える。この「その作品を好む者の総称」という意味では、「〇〇厨」「〇〇マニア」という呼称が一昔前では幅を効かせていたのだろうか。そういえば、昨今では「〇〇厨」という表現を見かける機会はグッと減ったように感じる。
時代と共に流行りの言葉は移り変わるからして、一昔前の「〇〇厨」が現在の「〇〇クラスタ」なのかもしれない。しかし両者が明確に異なる点として、「〇〇厨」は“蔑称”としてのニュアンスが非常に強い。つまりは、ネット上で迷惑行為をしている人に対し、その人(ひいてはその集団)を“叩く・批難する”目的で用いられる。例えばアンパンマンのファンが「今期のアニメはどれもクソ以下。アンパンマンこそが至高」などとネットで発言すると、それに対し「アンパンマン厨は黙ってろ」などと切り返しがくる。と、こういう感じだ。
オタクは、コンテンツと同族との繋がりを求めて現実社会とネット社会の二足のわらじを履くからして、ネットで流行る単語というのはオタク文化と密接な関係性を持つ。何らかのアニメやコラ画像で用いられた台詞が常套句として定着し、今では何が元ネタか知らずに使っている人も無数にいるだろう。そんな閉じた社会は一般的には「ネットの人(=オタク)」という視線で見られ、好意的な目を向けられることはあまり無い。というより、“無かった”と書いた方がもはや正しいのかもしれない。
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いつから、「オタク」という単語は“蔑称”を脱したのだろうか。インターネットが普及し、スマホが一般的になり、ネット社会への敷居は低くなった(誤用)。今では日本の「OTAKU」コンテンツは世界に誇るものになり、クールジャパンという国策も広く知られることとなった。というか、こういった「オタクは広まった」「恥ずべきものではなくなった」的は話はもう何処でも彼処でもやり尽くされてきた訳で、今更私が書けることなんて無いのだけど、どうにも“私個人”は、未だに「オタク=蔑称」の図式が崩れない。
昨今は「オタク」という言葉が一般化され、「○○オタク」となれば「○○に詳しい人、専門家」みたいないいイメージもついて回っています。そのため「オタク」と呼ばれてもあまり気にしないというか、言われてもダメージはありません。しかし「おたく」という言葉は本来「蔑称」であり、アニメを趣味とする人たちにとって「おたく」と呼ばれることはとても恥ずかしいことだったのです。
・本来「おたく」は蔑称であった
引用した上の記事では岡田斗司夫氏の名前も挙げつつ「オタク」とう単語について論じているが、私はこの単語が呼ばれ始めた時代よりは後の世代なのだけど、それでもどうしても「オタク=蔑称」のニュアンスが拭いきれない。俗にいう「オタクと言われる人たち」は、現実社会では中々その趣味を受け入れられ難く、ネットを主な趣味嗜好の広場として生息する。中学生辺りで2ちゃんねるが立ち上がった私たちの世代においては、このような認識が強くはないだろうか。
というか、未だに私は初対面の相手に向かって「日曜朝早くからヒーロー特撮番組を観て毎週末映画館に通って新作映画を観ています!」とは絶対に言えない。蔑みの目はさすがに減ったが、どうしても「変な人」という視線は免れないし、「うわっ!?」という表情は避けられない。本当はそんなことは無いのかもしれないけど、ここで真に言いたいのは「私の中にそういう感覚がある」、ということだ。これは、「オタク=蔑称」の図式が中々自分の中で崩れないことと決して縁遠くはないだろう。
「自分が好きな趣味なら胸を張ってそう言えばいい」。私にとってはそれは「そう言えるだけとても恵まれたこと」であり、以前『「宮崎駿に人生を壊された女」に矢を放つオタクたち』でも書いたように、“好きな物を好きと言えない難しさ”はかなりレベルダウンしたとしても未だに決してゼロではないのだろう。とはいえ「オタクは気持ち悪く蔑まれてナンボ」だとも思わないし、じゃあオタクが(今よりもっと)市民権を得た方が嬉しいのかと問われると、どうにもハッキリと答えられない。
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とっても横道に逸れてしまった感があるが、「クラスタ」の話に戻る。つまるところ、私がこの呼称に抱いてしまう違和感の要因は、「蔑称としてのニュアンスが皆無」だからではないだろうか。ここで「べき」の二文字はあまり使いたくないのだけど、「オタクは一般人に比べると比較的隠れてネットを中心に生きる“べき”」という私の中でどうしても拭いきれない(古い)図式が、「自称として用いられる単純に音がかっこいい横文字由来の四文字」である「クラスタ」に拒否反応を示しているのではないか、と。「厨」も、「オタク」も、更には「マニア」も、私の中ではどれも(未だに)蔑称としてカウントされてしまうのに、ほぼ同じ意味で用いられる「クラスタ」にはそのニュアンスが全く無い。これが、違和感の正体なのではないだろうか。
「クラスタ」という単語を用いている方々に抱いてしまっている私の勝手なイメージが、「包み隠さない」「嬉々として名乗る(自称する)」なのかもしれない。それは未だに「蔑称としてのオタク=だからこそ隠れて生きる“べき”」といった価値観を拭いきれない私に、「いやいやいや…」と、「ちょっと待てよ」と、「もうちょっと慎ましくやりませんか」と、何故かそういう感情を誘発させてしまうのだ。
同じネット社会での発言において「慎ましい」も何もありゃしないのは十分承知だし、オタクイベントが莫大な経済効果をもたらし世界に注目されるこのご時世において、「オタク=蔑称」の図式を持っている私が「遅れている」のも分かっている。とはいえ感覚とはそう簡単に拭いきれないもので、その凝り固まった前時代的な認識が、私に「クラスタ」を使わせまいとしているのだろう。「群れ」が意味する通り、「〇〇オタク」等に比べて「クラスタ」は“集団でひとつのコミュニティを形成する”という向きが強く、その「繋がろうぜ~~」なニュアンスがどうにも自分に馴染まないのかな、と。上にも書いたが、単純に音としてかっこいい四文字であることも、その“悪い意味でのギャップ”に拍車をかけている気がする。
重ね重ね言いたいのだけど、私は何も「クラスタ」という単語を用いている人たちを批難したい訳ではない。「私の古く凝り固まった勝手な価値観と認識が、どうしてもその単語に違和感を抱かせているのだろう」。 …これ以上でも、以下でもないのだ。
三十路手前でまだまだオタクとしては“ひよっこ”な世代だと思っていたが、気付けば十代の子からは「なんか昔のオタク(オッサン)が面倒臭いこと言ってる」なのかもしれない。違和感を掘れば掘るほどに、自分が異常なまでに拗らせてしまっていることを証明したに過ぎなかったのかもしれないが、この内容にどんな反応が返ってくるかという恐る恐るの好奇心も含めて、記事公開としたい。
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