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Channel: YU@Kの不定期村
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仕事に必要な「コミュ力」とは「効率的な責任逃れ」が目的なのではないか

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こんにちは、YU@K(@slinky_dog_s11)です。

新社会人で営業マンをしていた時、それなりに仕事は楽しかったが、ぶっちゃけ仕事の回し方は“下手”だったという自覚がある。当時の先輩や上司からも、「優先順位の付け方が甘い」とか「仕事を腐らせるな」とか「ボールを投げ返し続けろ」とか散々叱られて、理屈では分かったつもりでも実務には全く活かせていなかった。中でも、当時の就職氷河期も手伝ってやたら叫ばれた「社会人に必要なスキルはコミュニケーション能力」という文言について、「仲良くなれば仕事も円滑」以上の解釈が無く、心の中では「はいはいコミュ力コミュ力(鼻ホジ~」くらいの感覚であった。

私のいた当時の会社では「営業マンひとりにつき事務担当者ひとり」という体制を取っていて、常にペアで仕事を回すルールになっていた。つまり、営業マンが外回りをして、そのサポートを事務担当者が行う、というものだ。新社会人の私とペアになったのは歳が10ほど上の女性社員で、非常に気さくで優しくて一緒に仕事をしていて気持ちの良い人だった。が、結局はこの体制は「営業マンが事務担当者に事務仕事をお願いする」ことにより“回る”もので、私は肝心のそれが全く駄目だった。要は、「仕事の頼み方」が分からなかったのである。

別に営業担当者がメインで事務担当者がサブとかそういう上下感覚は無くて、あくまでペアでやるという土壌であったが、私はその年上の女性社員に事務仕事を頼むことが出来ず、先輩や上司の指導が入るも、その会社を転職で去るまで良いサイクルは築けなかった(念のため、転職の理由はこれではない)。言うまでもなく相手は年上の先輩社員で、その相手に向かって「この書類の整理をお願いします」とか「この入力をお願いします」とかは言えなくて、最初からそういう業務分担で相手もそれを重々承知してくれているのに、それでも“回す”ことが出来なかった。結果、自分だけで膨大な量の仕事を溜め込み、手が回らず、自滅したこともしばしば…。非常に、苦い思い出だ。


※※※


「仕事においてコミュニケーションが重要」とは、つまりどういうことなのか。

転職した次の会社で、それをずっと考えながら、反省とチャレンジを繰り返した。何度も自分の仕事の“回し方”を試行錯誤した。そこから数年かけて経験則で会得した(つもりな)のだが、要は「仕事におけるコミュニケーション」とは、「効率的な責任逃れ」のためにあるのではないか、と。

「責任逃れ」というと非常にネガティブでズルいニュアンスに聞こえるが、かっこつけて言えば、「リスク分散」である。例えば自分が受け持った仕事において大小に関わらず「あ、これ長引きそうだな」「こじれそうだな」と思ったら、すぐさま同僚や上司に“それ”を話す。別に答えを求める訳でもなく、「自分はこれに取り組んでいる」「悩んでいる最中です」という経過を伝えておく。それによって、万が一その仕事が地雷原に成長してしまったり、忙しくて手が回らなくなったとしても、それは“自分だけの仕事”では無くなる。「あ、この前言ってたやつね」、と、手伝ってくれたり、自分には無い解決策や情報を提供してくれたりもする。そうやって、“自分だけの責任”を“みんなの責任”にしてしまうのだ。

今これを読んでいて、「結局は報告・連絡・相談かよ」とか「自分の仕事を押し付けてくる奴はウザい」とか色々思うところがある人もいると思う。それもそうなんだけど、丸っきりそういうことでもなく、つまりはここに「日々のコミュニケーション」が活きてくるんだなあ… と、そういう話なのだ。

「コミュニケーション能力」は別に「ペラペラ喋るスキル」とイコールではなくて、平たく言えば「誰かと仲良くなれる能力」なんだと思う。相手のことを想って、助け合って、時には厳しくして(されて)、各々に適した距離感を作っていく。つまりはそういうコミュニケーションを普段から取っておくことで、“責任逃れ”が“逃れ”にならなくなる、ということを言いたいのだ。例えば、大して仲良くない相手から雑務を頼まれたら内心ムカっとなるが、仲の良い相手から頼まれたら自然と「なんとか手伝えないかな」という思考に向いてはいかないだろうか。

だからといって「仕事を頼む」だけでは言うまでもなくギブ&テイクの原則に反するので、効率的で清潔な“責任逃れ”をしたいのなら、同時に自分が常に誰かの“逃れ先”になっておかなければならない(仕事を“被り合う”スタンスが求められる)し、そういう相互に矢印が向いた状態こそが、最良の「リスク分散」なのだと思う。また、自分の仕事の進捗や姿勢を誰かと共有するということは、常にその中身が“見られる”可能性があり、常時「後ろめたさが無い状態」にしておかねばならないことも、また必然である。


※※※


思えば、最初の会社で尊敬していた「デキる先輩」も、よく自分が取り組んでいる仕事の内容を私に話していた。でもそれを聞くのは全く苦ではなく、今考えれば“そういう話が普通に出来る仲”に先輩が持って行ってくれていたのだな、と。それによって先輩が多忙の際に仕事を任されても「あ、この前喋ってたアレだ。これは誰と誰に聞けば自分でも出来るやつだ」と判断が出来るし、同時に先輩もよく率先して私の仕事を手伝ってくれた。単に「いい人だなあ」くらいに感じていたが、これは先輩なりの仕事の“回し方”であり、メソッドだったのかもしれない。

あの頃言われた「仕事を腐らせるな」も「ボールを投げ返し続けろ」も、要は「自分の仕事を自分だけで抱えすぎるな」というニュアンスだったのだろう。そのために、常に誰かと仕事を共有し、被り合い、そしてそれが互いにストレスなく行える関係性をこれまた常に意識して構築しておく。これがつまるところの「仕事においてコミュニケーションスキルが重要」の意味だったのではないかと、何年も働いてやっと辿り着いたような気がするのだ。

もう叶わないけれど、あの年上の女性社員の方ともう一度一緒にバリバリ仕事をしてみたい、と何度も悔やんでしまうのだ。今なら、「仕事をお願いする」の認識が、当時と全く違っているだろうから。


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