こんにちは、YU@K(@slinky_dog_s11)です。
映画や特撮を趣味としてこのブログやTwitterをやっていて、つい先日、そのTwitterのフォロワーがいつの間にか3,500を超えていて驚いた。それ自体が多いとかではなく、実はつい数年前まで、数年間ずっとフォロワー数は数百程度だったからだ。3年ほどその状態だったろうか。その後、2013年にある映画と出会い、それを機に「ネットで映画の感想を読んだり書いたりする楽しさ」に開眼し、映画を観る本数も爆発的に増え、積極的に映画好きな人のアカウントとの交流を持ち、その流れで翌年にブログを開設した。このブログもおかげさまで最近では月に40万PV以上は記録するのだけど、それもすべてひとつの映画がきっかけだ。
それは、2013年8月に公開された「パシフィック・リム」。“その界隈”では今もカルト的な人気を誇る本作だけど、公開前から根拠なくビビッときていた私は、映画自体を観てもいないのに数千円するフィギュアやアートブックを大量に買い込み、満を持して映画館に向かったのを覚えている。幼い頃から特撮番組が好きで、VHSのウルトラマンを何度も何度も繰り返し観ていた自分にとって、まさかこのクオリティで巨大な怪獣とロボットがガチンコで殴り合う映像が観られるなんて思ってもみなかった。それも、それが日本製ではなく、そのスピリットを受け継いだ監督による黒船という形で実現していたことが、何よりも衝撃的だった。
冒頭のジプシー・デンジャーの出撃シーンで嗚咽を漏らしながら泣きじゃくった。別に感動するシーンでも泣かせるシーンでもないのだけど、「こんな映像が成立していてそれを今まさに自分が観れている歓び」による涙が止まらなかったのだ。拳を握りながら、心の中で「いけぇ!」と叫び、放心状態のまま映画館を出た直後に2回目のチケットを購入した。
この作品はよく「ロボットと怪獣が戦うだけの映画」と評されるけど、単にそれだけではないと思っている。その「だけ」を気持ちよく成立させるために、人物関係やプロットの無駄を削ぎ落とし、非常に洗練された流れで観ている側にモヤモヤを抱かせず真っ直ぐに拳を握らせるように構成されているからだ。「ドッカン!ドッカン!はい終わり」、ではない。その「ドッカン」を、いかに本気で魅せるか。そのために、「ドッカン」以外の部分にも相当に気が配ってある。だからこそ、この映画は単なる「映像すごかったね」だけではない魅力に溢れているし、その界隈の人々の心をガツンと掴んだ。
こんな素晴らしい映画の感想は、自分の中だけでは消化できない。目の前に取りあえずあったのはTwitterだった。積極的に感想を探し、同じように衝撃を受けた人たちと繋がり、意見を交換し、時にはこの映画を斜に構えて評してくる人もいたけれど、そういうのも含めて、「あ、映画って、観て自分の中で咀嚼して終わり、ではないんだ」という意識を、身を持って体感した。映画というのは、もちろん作品単体が全てではあるが、それを好きな人たちにとっては繰り返し来る波のようなものだ。小まめなムーブメントだ。その波にタイミングよく乗って、そして乗りこなして次の波にも乗って、いつの日か「あの日の波は良かったよな」と思い出しながら語り合う。その波に乗る心地よさを知ってしまった。
だから、なるべく映画は公開シーズンに映画館で観るようになっていった。それまでも映画館には人より行く方だったけど、「パシフィック・リム」以降、観る数が2倍にも3倍にも増えた。もう一歩引いて波の全体が見えるようになると、製作発表からスタッフ・キャストの決定、本国での公開、日本での公開、興行成績、反響、ソフト化まで、波がほんの小さい頃から通り過ぎるまでの一部始終を楽しむ歓びも知った。数年かけて1本の映画の波に乗って、しかもそれを何本も何本も並行していく。その面白さに終わりはない。(もちろん洋画だけでなく、ある意味節操なく色んなジャンルを観るようになっていった)
生まれが極度の田舎だったこともあり、映画館には船に乗らないと行くことができなかった。両親もそこの出身だったので、そもそも私の家庭では「映画という娯楽」があまり市民権を得ていなかった。だから、正直昨今のリブートブームはちょっと悔しいし(過去の作品への数年越しの思い入れが無いから)、将来子供が出来たら色んな映画を観せたいといつも嫁さんと話している。その嫁さんも、付き合った当初は「映画は年に一度くらい恋愛モノを観る程度」という状態だったが、今では私と一緒にほぼ毎週映画館に通い、スクリーンで観る楽しさにすっかりハマっている。
進学により実家を離れてから映画には少しずつハマっていったが、その文化に思いっきり足を突っ込んだのは、やはり「パシフィック・リム」だった。毎週、膨大な資金と時間をかけた作品が公開されていく。それに我々映画好きは一喜一憂して、次の波を待つ。IMAXで観てジプシーの表面の固さを実感し、4DXで観て水を浴びながら拳を握りしめ、海外版のBlu-rayを輸入購入してセルフアフレコしながら晩酌して、そうやって私は映画という文化に本格的に没入していった。
やっぱり、「パシフィック・リム」なんですよ。単に映画の中身だけではなく、この作品が私に「映画」という文化のひとつの楽しみ方を本格的に教えてくれた。自分で観て「なるほど」と噛み砕いて終わる。それも良いのかもしれないけど、やはり今はネットがあるし、感想や解釈を無限に交し合える環境がすぐ目の前に存在する。それはとても幸せなことだと思う。大げさかもしれないけど、ひとつの映画に人生の軌道を変えられることって、本当にあるんですよね。そしてそれは、私の「パシフィック・リム」のように、映画が好きな人それぞれに“1本”があるのだと思えてならない。
※映画・特撮の感想など、全記事一覧はこちら。
【Twitter : @slinky_dog_s11 】【はてなブックマーク : slinky_dog_s11 】【LINE : @fgt3013f 】
【過去記事】
・「アベンジャーズ / エイジ・オブ・ウルトロン」は駄作でも傑作でもない
・大傑作!「ジョーズ19」が放つ堅実かつ挑戦的な次世代サメ物語(ネタバレ+解説レビュー)
・【総括】「NARUTO」全73冊+映画2本+傑作「BORUTO」を完走したので1万字かけて感想を語り尽くすってばよ!
・「WATCHA」、それは感覚を先回りする映画レビューアプリ