こんにちは、YU@K(@slinky_dog_s11)です。
一介の映画好きとしてネットのその界隈をウロウロしていると、決まって聞こえてくる声がある。「邦画はクソ」「洋画しか観ない」「邦画は駄作ばかり」。海も次元もまたがって鑑賞する雑食な自分からすると少しムムッとなってしまうフレーズだが、ここまではいかずとも近い感覚を持っている人は多いように見受けられる。そもそも論として製作費や規模が違うとか技術力の差がありすぎるとか土壌も歴史も何もかも …などと言い出すときりがないのだけど、とにかく何かと「洋画>邦画」で語られ“がち”な風潮は否めない。
邦画の名作と言われるひとつに、「ウォーターボーイズ」という作品がある。実際に先日行ったTSUTAYAにも「ハズレなしの名作コーナー」に陳列してあった。言わずと知れた矢口史靖監督が撮った2001年の作品で、主演は妻夫木聡。もはや名前だけなら知らない人はいないだろう。公開当時は口コミで人気が広がり6ヶ月超えのロングランを記録した。この「ウォーターボーイズ」という作品は、“光る部分”と“抱える部分”が非常に多く、実は主に2000年以降の邦画を語ろうとすると絶対に無視できない場所に堂々と鎮座している。そんな男子シンクロ映画を、ひとつの作品として、そして邦画として、紐解いていきたい。
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ストーリーは単純明快で、「色々あって男子なのにシンクロをやることになった数名の高校生が数々のトラブルを切り抜けながら青春に青春を重ねて文化祭の舞台を成功させて恋も叶ってイェイ!」という内容だ。邦画、と言わずとも“青春映画”のくくりでも高確率で名前が挙がってくるだろう。しかしその功罪は凄まじい。「圧倒的なシンクロ演技の迫力と盛り上がり」「青春の勢いと熱」は飛び抜けて魅力的だが、「執拗なナンセンスギャグ」「わざとらしくオーバーな演技」「決して上手いとは言えないプロット構成」など、その荒削りな部分はどうしても気になってしまう。
例えば、物語は主人公の鈴木が現役最後の水泳大会で惨敗し、シャワー室で悔し泣きをする場面から幕を開ける。その後、たまたま通りかかったプールに駆けつける女子高生の集団と遭遇。早まる鼓動と流れる音楽。思わず行き着いた先では、美麗なシンクロが披露されていた。…この冒頭のシーン、鈴木がシンクロ用のノースクリップ(鼻栓)を偶然拾うくだりから始まり、ワンカットの長回しでシンクロ演技目撃までの高揚感を演出している。「なんだなんだ? この先でなにをやっているんだ?」という鈴木の期待と焦りが手に取るように伝わるカメラワークは見事で、実際のシンクロもインパクトがある。
しかし、この「鈴木が偶然目撃したシンクロに衝撃を受ける」という導入は、その後全く活かされない。赴任してきた美人教師(眞鍋かをり)に釣られて水泳部員が急増するも、彼女がシンクロをやりたいと言い出すと鈴木を含む5人組だけが取り残される(このシンクロ願望を告白するシーンも非常に大仰でわざとらしい)。彼らは突如産休に入った眞鍋かをりから「シンクロ頑張ってね」と言い残され、呆然としたまま諦めようとするも、突然意見をひるがえしシンクロをやることを決意する。
彼らはなぜシンクロをやるのか。「男がシンクロ」とはこの作品以降非常にメジャーな概念になったが、当時、同時に劇中ではまだまだ白い目で見られることが多かっただろう。そんな(言ってしまえば)“恥ずかしい”ことを、なぜ彼らはやとうと思ったのか。それは……
■完全版は2015年12月末発売予定の電子書籍『THE BEST』(0円)に収録予定。詳しい内容や進捗状況はこちら。
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