こんにちは、YU@K(@slinky_dog_s11)です。
大人になって紙の札を触る機会はどうしてもお札くらいになってしまったけれど、今でもたまにトランプをやるとカードを「切る」(シャッフルする)動作だけは人並み以上にできる自信がある。束になったトランプをランダムに抜いて上に重ね、それを繰り返す。シュッ!シュッ!シュッ!…というあの動作。否が応でも血が騒ぐ。今から始まるのが他愛のないババ抜きであったとしても、心の奥底には幕を開ける「決闘(デュエル)」に奮い立つ自分がいるのだ。
高橋和希により1996年から週刊少年ジャンプで連載を開始した漫画、「遊☆戯☆王」。気弱な高校生・武藤遊戯がある日祖父から貰った千年パズルを解いたことをきっかけに、自身に古代エジプトの王の魂を宿す。二重人格となった彼は、あらゆるゲームで戦い続ける“遊戯の王”となりながら、失われた王(ファラオ)の魂を巡る友情と闇の戦いに挑んでいく…。連載開始当時に小学生だった自分はこの作品をリアルタイムで読んでおり、98年の東映アニメーション制作によるアニメ化、そして00年にカードゲームをメインとした「デュエルモンスターズ」としてのアニメ化、社会現象となったOCG(オフィシャルカードゲーム)の大流行など、その全てに大いに揉まれてきた。
そんな遊戯王世代の回顧録をひたすらに綴りながら、原作「遊☆戯☆王」を中心にその物語の魅力に迫ってみたい。
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原作の「遊☆戯☆王」が「友情」の物語であることは広く知られた話だ。遊戯は、自分をいじめていた城之内や本田を更なるいじめっ子から庇い、その行動が城之内をプールに飛び込ませる。彼のずぶ濡れの行動がパズルの最後の1ピースであり、その友情成立を経て完成した千年パズルは、遊戯に通称“闇遊戯”という裏人格を潜ませる。「ジョジョの奇妙な冒険」で知られる荒木飛呂彦の影響を強く受けていると公言するだけあり、その奇怪演出とホラーテイストの中で活躍する闇遊戯のダークヒーローっぷりは当時の私には新鮮であった。ゴゴゴ…といった擬音の演出など、ジョジョ視点で読み込むと原作序盤は別の面白さが垣間見える。サブキャラや脇役が再登場する箱庭感覚の物語などは、まるでジョジョ四部のようでもある。
スポーツや格闘、戦闘をせずに、「主人公がゲームで悪を裁く」。それも必殺仕事人のごとく闇に紛れて人目のないところでそのゲームが行われ、負けた悪人に対してはこの上ない皮肉の効いた罰ゲームを喰らわせる。その所業は遊戯“本人”でさえ気付いていない。そんな影のヒーローとして描かれていく闇遊戯の活躍は非常にエキセントリックであり、どこかバットマン的な“闇の仕置きヒーロー”のようなカッコよさも併せ持っていた。(まさにアメコミチックなダークヒーロー・ゾンパイアという存在が出てくるあたり、高橋先生も相当なアメコミ好きだと思われる)
この連載序盤から後に宿命のライバルとなる海馬が登場し「M&W(マジック&ウィザーズ)」というカードゲームも初登場。そして、物語終盤の鍵を握る存在・シャーディーも登場し、古代エジプトの謎が物語の根底にあることが示唆されていく。また、カプセル・モンスター・チェスや龍札(ドラゴンカード)など作者オリジナルのゲームの多数登場。読者にとっては初めて出会うゲームなのに、短時間でしっかり「勝つための説得力のあるロジック」を提示してくれるのが面白い。海馬が遊戯を陥れるために仕組んだプロジェクト「DEATH-T」を潜り抜け、カードゲームとしての魅力、そして友情物語の側面が次第に……
■完全版は2015年12月末発売予定の電子書籍『THE BEST』(0円)に収録予定。詳しい内容や進捗状況はこちら。
(あわせて読みたい)
・懐かしいぜ!東映版アニメ「遊☆戯☆王」ホームページで思い出に浸ろう! ~90年代の遺産と闇のゲーム!
※映画・特撮の感想(レビュー)など、全記事一覧はこちら。
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